44歳からの留学 ― 米国管理栄養士の、事の始まりから現在まで⑯

こんにちは。『44歳からの留学 -67歳現役米国公認管理栄養士、20年の奮闘記』(Book Trip)の著者のYufiこと堀尾シェルド裕子です。私の体験が、これから留学を考 えている人、米国で管理栄養士になることに興味のある人に役立てることを願っています。また物見遊山でこのサイトをみた方、野次馬も歓迎です。コメントもよろしくお願いします。

 

いよいよ米大学留学が始まります。

 

著書より前回の続き

 

モントクレア州立大学に向かう

 

 翌年の1998年(平成10年)1月の初めに、姉と甥に送られて、アいメリカに出発した。緊張感が体全体を覆っていたが、くよくよしている暇もない。目の前に起こっていることを、解決していくしかない。

 ニュージャージー州のニューワーク空港に下りた。手引書通り、タクシー乗り場で、ガイドに行き先を言い、値段も書いてもらった。35ドルとある。列に並んで、タクシーを待ち、私の番が来て、車に乗り込んだ。パキスタン人らしいドライバーだった。話す英語はお互いに 最小限だ。タクシーは、モントクレア州立大学まではスムーズに行けたのだが、肝心の、私の住むことになる学生用アパートが見つからない。住所はわかっていても見つからない。タクシーは大学の周りをぐるぐると回った。まだ学期が始まる前だったので、キャンパスに人影はあまりない。やっと一人学生らしい若者を見つけたので、聞くと、先ほど通り過ぎた方向を指して、そこだと言う。そこに行くと、何の表示もなく、人影もまったくなく、確信が持てなかったので、そこでは降りなかった。一度間違ったところでタクシーを降りてしまえば、大きな荷物を抱えて、一人さまよい歩かなければならなくなる。タクシーがまた先ほどのところに戻ると、同じ若者がまだいたので、事情を話すと、近くの学生センターを指して、そこで聞けと言う。そこに行って聞くと、アパートは、やはり若者が教えてくれた所だった。やっと、アパートの敷地に着いて、タクシーを降り、支払いの段になると、ドライバーが、55ドルだと言う。20ドルも跳ね上げた。グルグルと廻り、こんなに時間もかかったと言う。私にはその辺の兼ね合いがよくわからなかった。メーターもない。騙されているような気もした。私は、35ドルと言われていると言って、チップを含めた40ドルを払おうとすると、ドライバーは怒って、やはり55ドルだと言う。私は、もう全くどうしたらいいのかわからなかったが、ただ頑として、40ドルを渡すと、ドライバーはカンカンに怒って、何か悪態をついたようだが、お金を奪い取るようにしてそのまま走り去った。あの時もう少しあげるべきだったのかとも思う。モヤモヤが残る。これが、アメリカでの最初の試練だった。

 

学生用アパート

 

 学内にはドミトリーがあり、それとは別の学生用アパートは、大学の敷地外で道路一本を隔てた所にあった。私が学生用アパートに暮らすことになる手筈は全て、海外留学センターによるものだったので、ドミトリーと学生用アパートの違い、値段の違いなどは知らない。横に長い、二棟の木造二階建ての建物が学生用アパートだった。部屋は二人部屋で、その二人部屋が二つ、計四人で、一つの入り口とダイニングキッチン、バスルームが共有されていた。

 始めて鍵をもらって中に入ると、共有のダイニングキッチンも、私の部屋になる二人部屋も、まるで先住者が夜逃げをして出て行ったかのように汚く散らかっていた。期待に胸を膨くらませていた留学生活のしょっぱなから、意気消沈してしまった。とにもかくにも、これが現実であることを肝に銘じて、先ずは掃除をすることから始まった。ルームメイトは来ていなかった。結局、学期中ルームメイトは来なかったので、ラッキーだった。鍵をかけてしまえば、外界の緊張から解放されて、ほっとできた。

 隣の部屋は、アメリカ人とアルゼンチンから来た学生の共有だった。アメリカ人の学生のボーイフレンドがしばしば来ては泊まっていったが、皆親切で、学期中何のトラブルもなかった。

  

迫る受講クラスの登録締め切り

 

 通常、新学年は9月の秋学期から始まり、オリエンテーションなど、懇切丁寧なガイダンスがあるのだが、私の場合は一学期遅らせた春学期からのスタートなので、オリエンンテーションがない。インターナショナル・スチューデント・センターだけが頼りだった。インターナショナル・スチューデント・センターは留学生が主なスタッフで、生活面から学業面まで、基本的なことは広範囲に、親身に相談にのってくれる。それと、留学生に限らずアカデミック・アドバイザーが学生一人ひとりにいて、学業面での卒業に至るまでのガイドをしてくれる。私のアカデミック・アドバイザーはバウアー先生(Dr Bauer)であることがわかった。

    クラス登録の受け付けは12月から始まっている。そして、授業は約一週間後には始まる。だから、クラスの登録は今すぐにしなければならない。早速バウアー先生のオフィスに電話した。だが先生は不在だった。メッセージは残したが、先生はまだ冬休み中だった。どのクラスを登録したらいいのかが判らない。インターナショナル・スチューデント・センターに行って相談しても、彼らにもわからない。私は絶望にくれた。インターナショナル・スチューデント・センターとアパートの間を行ったり来たりした。登録ができない。もう今学期は諦めるしかないかもしれない。でも諦めるということは、3カ月を無にするということだ。それは長過ぎる。

   翌日、アパートに電話がかかってきた。なんとバウアー先生からだった。神の声に聞えた。バウアー先生からオフィスに来るように言われた。(続く)