44歳からの留学 ― 米国管理栄養士の、事の始まりから現在まで ー 余談㉕断食

私の著書の中でも書いた通り、私がマクロビオティックに夢中で取り組んでいたことが縁で、アメリカに渡り、その事がきっかけで、アメリカに留学して、米国管理栄養士になった。そのマクロビオティック時代に、断食療法なるものを学んだ。その後、古今東西、断食と言うものが存在し、また断食の定義も様々であることを知った。イエス・キリストは荒れ野で40日間断食したという。イスラム教ではラマダンと言って、イスラム暦9月の一か月間、日の出から日没にかけて断食をする。

さて、私がマクロビオティックに夢中で取り組んでいた時の断食療法の話に戻すと、当時の先生の一人、O先生は、十日間の断食療法で万病を全て治すと豪語していた。その断食中は、食べ物はおろか、水も飲ませない(または制限していた?記憶がさだかではない)。なので、その療法を、その先生の下に泊まり込みで、受けている患者のなかには、水が飲みたくて、ショウガ湿布のお湯を、闇雲に飲んだ者がいるとO先生は話していた。

私が私の留学についてのアドバイスを求めたマクロビオティックの友井先生は、年に1-2回の断食道場を主催していた。私も一度屋久島で行われた断食道場に参加したことがある。その断食療法は、5日間で、始めと最後の日は、少量のおかゆ等を食べ、中3日がお茶などの水分だけはとってもいい断食である。私は、マクロビオティック米食を始めてからは、著書の中で述べた健康問題もなくなりいたって健康だったので、特に断食による健康効果を感じることはなかったが、良い体験ができたと満足していた。

なので、断食健康療法は、日本では割と人気のある東洋的な療法であると思っていた。ところが、最近ではアメリカでも、間欠的断食という、1-2食を抜き、一定時間食べないという健康法が、浸透し始めているようなのだ。私が最近読んだ論文のなかでも、アメリカの看護師たちの健康習慣調査で、健康のために朝食を抜くなどの間欠的断食をしているという割合が一定程度いると出てくる。つい最近読んだ論文でも、間欠的断食とカロリー制限食では、どちらが減量効果や生活習慣病のリスクを減らせる効果があるかの研究がなされていた。わりと最近までは、栄養学会でも朝食を抜くことは、健康に良くない一辺倒だったのにだ。

それと言うのも、日本人科学者の(東京工業大学の)大隅良典博士が、「オートファジー」(自食)の仕組みを解明した功績により2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞しからではないのかと思う。

オートファジーとは、食べないことで、体が細胞をつくるために必要な栄養を得るために、既にある細胞内の老廃物や有害物質、正常な組織などをすべて回収・分解し、リサイクルして利用し、新しいものに作り変える仕組みだ。 具体的には最低16時間の断食をすることでこの効果をえられる。通常は一食抜いて、8時間の枠内で食事をする。その効果としては、体重の減少効果はもとより、免疫力をあげ、腸内環境の改善、アンチエイジング、癌細胞の除去等があげられている。

私の夫はアメリカ人で、アメリカンフードで育ち、40年以上にわたるヘビースモーカーとしての喫煙(7年前から禁煙)で体をめちゃくちゃにした一人だ。一緒に暮らし始めてから20年、健康食になった筈なのに、10年位まえから、高血圧、COPD (慢性閉塞性肺疾患), CHF(うっ血性心不全)等、慢性病のオンパレードだ。本人は、サプリで治すと言って、山のようなサプリをためしてきたが、いっこうによくなる気配はない。夜中に我慢できずに間食をする習慣もある。断食を勧めたことはあるが、やろうと思えばいつでもできると言い、そのくせやろうとはしない。ところがあるYouTubeをみて(私も見た)、その話手が断食の効用について語っていた。断食をすると、内臓が委縮するが、断食を終えるとそれが元に戻る、そして若返ると。その言葉に妙に説得力があり、夫は突き動かされたようだ。断食をすると言いだした。私は、それが続かないのがわかっているので、一日1食の間欠的断食を勧めた。本人も同意し、それを10日間続けた。それから、2食に移行し、10日位してから夫は血液検査を受けた。結果、悪玉コレステロールは下がって正常範囲だった。糖尿病の指標となるA1cも正常範囲内とはいえ、少しづつ上がってきていたものが、今回は下がっていた。浮腫のために服用している利尿剤がクレアチニンを上げていくので(腎臓機能低下につながる)、夫がひどく気に病んでいたのだが、それもやや下がっていた。

Dr. Alanアメリカの彼の代替医学の治療院で、水断食を指導しているが、彼の指導の下に実行している患者たちは、5-14日間の水断食で、慢性病のほとんどが治るという。マクロビオティックのO先生がやっていたのとほぼ同様だが、水を制限しないところだけは違う。

https://www.chrisbeatcancer.com/dr-alan-goldhamer-healing-disease-with-water-fasting-and-a-plant-based-diet/

堀尾シェルド裕子