44歳からの留学 ― 米国管理栄養士の、事の始まりから現在まで⑳

こんにちは。『44歳からの留学 -67歳現役米国公認管理栄養士、20年の奮闘記』(Book Trip)の著者のYufiこと堀尾シェルド裕子です。私の体験が、これから留学を考 えている人、米国で管理栄養士になることに興味のある人に役立てることを願っています。また物見遊山でこのサイトをみた方、野次馬も歓迎です。コメントもよろしくお願いします。

 

サマーセッションに入ります。さてそのデキは?

 

著書より前回の続きです。

 

サマーセッション

 

   サマーセッションとは、五月末から八月くらいまでの夏休み中に行われるクラスのことだ。通常の学期だと、週一回のクラスが、サマーセッションでは、毎日であったりするなど、あくせくするが、短期で、単位をとるにはもってこいだ。勿論夏休みに働いたり、遊んだりで、サマーセッションを全く取らない学生もいて様々だ。

   キャロルの作成したカリキュラムでも、私はサマーセッションで 2科目取るようになっていたので、自分で少し科目を変更した2科目と、さらにもう1科目加えて、計3科目取ることにした。それは「コンピューターの基礎」(Introduction of Computer Application)、「統計学」(Statistics)、そして「スピーチ」(Fundamental speech)だ。「コンピューターの基礎」と「統計学」は、ほぼ毎日なので六・七月で終ってしまうのだが、「スピーチ」は週一回で、七月の下旬から始まり、八月半ばで終わるので、先の2科目とはあまり重ならず、私にとってはちょうどよかった。「スピーチ」を急遽加えたのは、デグリーを取るために増えた3科目を、少しでも早く消化したかったからだ。

   「コンピューターの基礎」は、全く問題がなかった。勤めていた会社でも、自宅でも使っていたので。

    「統計学」は、笑いの止まらないクラスの一つだった。これは色々な状況の設定のなかで、統計学的な答えを数字で出していく学問だから、リスニング や ライティング の英語力はほとんどいらない。公式を理解して使い、ひとつの答えを出す。教科書もちゃんとある。夜のクラスだったので、昼間、復習と宿題をして、クラスに臨んだ。毎回の小テストはいつも満点だった。他のクラスメートはと言えば、これが算数や数学にカラッキシ弱い。彼らはとにかくできない。勿論、彼らは昼間バイトやレジャーで、私のように復習や宿題に時間をかけたりなどもしていなかったのだろうけれど。20人くらいのクラスのなかで私がいつもできたので、先生も注目した。ことわっておくが、私は数学は決して得意な分野ではなかった。高校の時も数IIIはとっていない。こんな私でも、いや日本人なら皆、アメリカでは数学の秀才になれる。

   「スピーチ」は、パブリックスピーチのクラスだ。これは、私の出る幕のないクラスだが、必修なのでいつかは取らなければならない。全員が三つの違うタイプのスピーチをしなければならない。では英語のネイティブ・スピーカーであれば問題はないかと言えば、そうとも限らなかった。人前で話すのは苦手という人は何処にでもいる。それと、パブリックスピーチは構成が重要で、アウトラインを事前に提出しなければならなかった。このアウトラインの構築は、私にとっては難がなく、むしろ私の得意とするところでもあった。それで、我ながら惚れ惚れするようなアウトラインを構築し、時には友人にも聴衆になってもらったりして、練習に練習を重ね、本番に挑んだ。発音などは今更もうどうにもならないので、メチャメチャなままだ。聴衆にはツージないこともままあっただろう。でも、先生は評価してくれた。

   それぞれの授業が終り、成績が出た。3科目とも"A"だった。ヤッター!!! 天にも昇るような気持ちだった。残り十日ほどの夏休みに、母の一周期に出るため日本へ里帰りした。

 

秋学期(Fall semester)

 

  秋学期には、「基礎有機化学」(Fundamental Organic Chemistry), 「食物の構成と科学的調理」(Food Composition & Scientific Preparation)、「ライフサイクルにおける応用栄養学」(Applied Nutrition in Lifecycle) そして、「マネージメントプロセス」(Management Process)を登録した。ここでは、「基礎有機化学」について特記したい。有機化学とは、 炭素を含む化合物すなわち有機化合物を研究する学問だ。いわゆる「亀の甲」といわれる化学構造式が理解できなければほとんど理解できないとも言われる。でも私にとっては、英語の聞く・話すのあまりいらない恰好の科目だ。

  「基礎有機化学」の授業の始めの日、担当の先生が、クラスの三分の一が落第するだろうと言って、クラスの皆を震えあがらせた。授業が進むにつれて、確かに難しくなっていく。私は、クラスのテキストとは別のテキストも使って理解に努め、必死でついて行った。毎回の小テストは、まあまあだった。

  中盤に入って、クラスを辞める学生が出て来た。アリスもその一人だった。彼女は基礎化学でも苦しんでいた。でも公認管理栄養士またはダイエティシャン(RD)になるためには「基礎有機化学」は必須の課目だ。アリスはRDを目指していたが、辞めるにあたって、家庭科の教師を目指すと言っていた。

 私の成績はA-だった。先の項で触れた「統計学」同様、有機化学アメリカの学生が最も恐れている科目だとどこかで読んだことがある。「統計学」のAと「基礎有機化学」のA-は、私の勲章だ。(他の課目の成績については巻末参照のこと)

 (続く)