44歳からの留学 ― 米国管理栄養士の、事の始まりから現在まで ー 余談⑯トランスジェンダー

時代は大きく変わった。ここ数年、トランスジェンダーの話題、ニュースがメディアによく上がる。ディズニーの後継者のひとりがトランスジェンダーであるとカミングアウトし、性別の問題を学校やクラスで話すことを禁ずるフロリダ州の法案を批判した。一方で、ディズニーをボイコットする動きもでている。まだ無自覚な小さな子供たちに何故性別の問題を話さなければならないのかと。

バービー人形も例外ではない。トランスジェンダーのバービー人形が作られた。

ニューヨーク州では、ごく最近、運転免許証の性別欄に性別を特定しない「X」の選択が可能になった。

男性に生まれて、女性に変ったトランスジェンダーの水泳選手、リサ・トーマス(1998年または1999年生まれ)も今注目を集めている。大学での競泳で好成績を収め、オリンピックを目指しているという。高校の終わりごろから、自身の性別に違和感を覚え始め、20-21歳ころからホルモン療法を始めた。22-23歳から女性として競技に参加するようになった。ただ彼女のチームメイトは、彼女(リサ・トーマス)が、ロッカールームで、彼女のペニスを覆わずにいることが不快だと言う。ペニスがついていて、女性のロッカールームで露出!?! その彼女は、なんと全米大学体育協会の2022年の女性賞に所属のペンシルベニア大学から推薦された。https://www.thegatewaypundit.com/2022/07/trans-swimmer-lia-thomas-nominated-woke-upenn-ncaa-woman-year-award/

さて私の周辺では?

少し前、私の所属するニューヨーク州保健省(職場は老人ホームだが)からの任意のオンラインのサーベイがあった。性別の質問に、初めて四つの選択肢があった。男性、女性、その他(自由な書き込み欄と共に)、そして表明したくない、と言う選択肢だった。

そして私のメンバーとなっているAcademy of Nutrition and Dieteticsの月間ジャーナルにも、最近、トランスジェンダーに関する記事が載ったのだ。

米国では、大人の0.6%、13-17歳の若者の0.7%がTGGD (trans gender and gender diverse/トランスジェンダーと性別多様性)であるという。TGGD は一般人口に比べて、貧困層が2倍以上に上り、失業が3倍以上で、少なくとも3分の1が、医療システムにおいて、差別的な扱いをされ、4分の1が不当な扱いを避けるために、必要な医療を避けている。栄養関係でも、摂食障害、身体醜形障害、食糧不安、肥満などの率が高い。

実際栄養評価において、どのような影響があるかというと、従来、身長差による小中学生のBMI パーセンタイル値と肥満度の基準は、男児女児で確立されている。推定エネルギー必要量計算も、男女でファクターが違う。鉄分の必要基準量も、女性は男性(19-50歳)の2倍以上高い。男性は、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットなどの血液検査基準が女性よりも高い。性別を変更するということは、その対象をどの基準をもって対処するのかということも問題となってくるのだ。

記事の最後に、例を挙げての対処法がいくつか示されていた。その一つを紹介する。

50歳の黒人男性で鉄欠乏症の症例であった。彼は女性として生まれたが、男性としての自覚がうまれ、20代半ばから、男性ホルモン療法を過去25年間継続してきて、貧血症だという。マラソンのトレーニングをしていて、週に10-15時間走る。彼の場合は20年以上も男性ホルモン療法を続けているので、男性のヘモグロビン、ヘマトクリット等の検査基準を用い、介入するのが適当と示唆されていた。

 

堀尾シェルド裕子