44歳からの留学 ― 米国管理栄養士の、事の始まりから現在まで㉟

こんにちは。『44歳からの留学 -67歳現役米国公認管理栄養士、20年の奮闘記』(Book Trip)の著者のYufiこと堀尾シェルド裕子です。私の体験が、これから留学を考 えている人、米国で管理栄養士になることに興味のある人に役立てることを願っています。また物見遊山でこのサイトをみた方、野次馬も歓迎です。コメントもよろしくお願いします。

 

念願の管理栄養士の資格試験、RD Exam に合格.管理栄養士/RD としての就職です。

 

著書より前回の続き。

 

RD としての就職(2003年・平成15年3月)

 

 早速RDとしての職探しを始めた。臨床ダイエティシャン(Clinical dietitian) になりたい。病院、リハビリテーションセンター、長期療養施設・老人ホームの空きを探した。一たび資格を持てば、職探しは一般職のそれよりずっと容易だと言える。一つの空きに何十人も何百人も応募するということはない。せいぜい数人だ。それでも、私の場合は語学のハンディがあるので、競争は厳しいと言えるのだが。

 それと、臨床ダイエティシャンとしては、長期療養施設・老人ホームよりも病院に人気がある。統計においては、長期療養施設・老人ホームの方が給与水準がよいにも関わらずだ。ある先生にそれがなぜなのかを聞くと、その先生は、人が死にむかっているのが陰鬱だからだという。その時私はそれを全く意に返さなかった。年取っていようと、若かろうと、患者は患者だと思った。

 いくつかの空きを見つけ、応募し、結局ニュージャージー州の JFK老人ホームのダイエティシャンの職を得た。マネージャーはフィリピン人のダイエティシャンだった。息子の嫁が日本人だということで、私に親しみを覚えたようだった。ビザの件も面接時に話した。スポンサーが負担する申請費用は後で返すとも付け加えた。すると、そのマネージャーは、こともなげに、サポートすると言ってくれた。ナースなどで、そのような例を経験しているらしい。気の抜けるほどスムーズにビザ・サポートを得られ、私の初めてのRD としての職が3月の下旬から始まった。

 

H1B ビザの申請

 

 H1B ビザとは、学士以上の学位保有者で専門職につく者に与えられる就労ビザだ。専門職の例としては医者、金融アナリスト、会計士、薬剤師、ITのプログラマーなどの専門技術者等が挙げられる。毎年の申請の受付開始が4月1日で、申請受付数が上限を超えた場合には、受付が締め切りになるので、その年によるが、申請受付締め切りが4月上旬のことが多い。

 つまり、4月1日から4月7日位までの間に職をもって申請しなければならないことになる。このタイミングは、考えただけでも至難だと思われた。それまでに移民弁護士の所を訪ねてなんどその事を聞いたことだろう。そこのスタッフには、うるさがられて、その時になったら、考えようというような対応になった。

 さて、3月下旬のこの時の私の状態は、5月半ばまでのプラクティカル・トレーニング・ビザで合法に働けて、かつ4月1日からの申請受付期間に直ぐ申請できるという幸運が重なった。条件も書類にも困難はなかったので、後はいかに迅速にそれらを進めるかだけだった。費用を上乗せすると、15日で発行されるという特急申請 (premium processing) という選択があったので、それも使った。かくして、私は4月20日に3年間のH1B ビザを手にすることが出来た。ビザの事を持ち出して首になった、1月の半ばから、RD examの猛勉強、合格、就職と瞬く間の、4カ月後のことだった。

 

JFK老人ホームでの仕事

 

 そんなわけで、私は、H1B ビザをもち、合法的に、RD としてJFK老人ホームで働き始めた。私の前にはフィリピン人の資格をもっていないダイエティシャンが働いていたが彼女はやめることになっていた。修士号ももっていて聡明なRD のジョセフィーヌは、週2・3日のパートで働いていたが、彼女も去っていった。時給は19ドルで始まり、一カ月後には20ドルにあげてくれた。但し社会保険はついていなかった。

 私は一階と二階の全ての入居者200人を受け持つことになった。これは異常に多い受け持ちだ。老人ホームではRD 一人に110-120人位の受け持ちが妥当と聞いているから、通常の二倍近くということになる。おまけに、栄養評価のシステムもなかった。体重が激減したり、激増したりしても、偶然に発見するか、見過すかで、システマティックなフォローアップは出来なかった。マネージャーのデボラは、日にひに私の見過しを意地悪く批判するようになっていった。

 そもそも長期療養施設・老人ホームのダイエティシャンの仕事は、MDS (minimum data set) コーディネーターによって作成された週毎のスケジュールに従って入居者の栄養評価をし、MDSにおけるダイエティシャンのセクションの入力をする。その間にも、入居者からのメニューの好き嫌い屋や注文があれば聞き、また食事療法が必要な場合には、本人か家族に食事療法の説明や教育をしなければならない。担当の人数が人数なので、それだけで精一杯で、体重変化のフォローアップ等はシステムもなく出来なかった(後に働いた施設ではシステムがあり、神経をすり減らさずにフォローアップができた)。

(続く)